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「ウェルカム・ドールハウス 」(1995) - Welcome to the Dollhouse アメリカ [映画]

監督: トッド・ソロンズ
出演: ヘザー・マタラーゾ、ブレンダン・セクストンjr

★★★★★☆

11歳の苛められっ子、ドーンの物語。
苛められている理由は「ブスだから」。

それにしても、ソロンズ監督のキャスティングの妙はもう奇跡ですね。
ドーン役のヘザーちゃん、一体何処から連れて来たのでしょう??
牛乳瓶底メガネに、ボケーッと開いた締まりのない口、白ブタのようなポッチャリ体系、愛想の欠片もなく、奇想天外なファッションセンス。
外見は、実はちょっぴり小学生時代の私に似ている気がするのですが。。。
違うのは、苛め抜かれても決して屈しない、ふてぶてしい態度。

そして、憎ったらしいほど可愛い、ちゃっかりしたあの小娘の妹!
なぜか始終くるくるくるくるバレエを踊っている。
奇妙な顔をし、独自の理論と世界観をとうとうと話すオタクの兄、マーク。
彼女を憎み軽蔑するクラスメイトのロリータにしても、あんな気だるく曇った目をした子供がいるとは・・・。

母親は妹を露骨にえこひいき、先生にも嫌われ、クラスメートの意地悪にやり返せば、いつも自分に説教のお鉢が廻ってきてしまう・・・。
けれどもドーンはさめざめとした涙も、惨めさの片鱗も見せはしない。
彼女が心の中で憎悪と反抗を掻き立てる度に、ジャーンと流れるロックなエレキギター音。
それだけに、母がデザートのケーキをドーンにだけ分け与えなかったシーンには、涙が出ました。
母親の気持ちもわかるほどに、憎たらしいんですけどね。

物語が進行して行くにつれ、ドーンを取り巻く状況は悪化して行くばかりで、救いのないお話なのだけど、彼女は持ち前の頑強さでしっかりとそこに頑張っており、悲惨さはないのです。
ブスだって、苛められていたって、自分の道を生きる権利はある!
この態度が素晴らしい。
往々にして苛められっ子は、自分を責めたり自信を失くしたりするものだけれど。
高嶺の花である年上のプレイボーイに一方的に恋をし、ヨダレを垂らさんばかりの欲情ぶり。
友達からされた意地悪を妹にする陰険さ、それを親に叱られると、今度は悪態を付きながら、こっそり妹のお人形の首を包丁でゴリゴリ。
さらに「テメー犯すぞブス」と凄む苛めっ子ボスの男子が抱く恋心を、実は手の中で転がしていたりと、彼女ならこの先も大丈夫に違いない、そんな頼もしさを感じさせてくれるのです。

苛められている子にこの映画を見せて、ドーンのようにしぶとく生きる術を見につけてもらいたい。
異常に気の弱かった昔の私に見せたかったよ。

さらに監督、人間の形容し難いが何とも言えない「憎たらしさ」「いやらしさ」を醸し出すのが超一級にお上手なのです。
ブラックだが、なぜかユーモラスな一本でした。

しかし、番外編で悲しいお知らせが。
「おわらない物語 アビバの場合」の冒頭、この兄マークの成人した姿が見られます。
妹の葬式で答辞を述べる彼。
そう、このお話の冒頭で、結局ドーンは自殺してしまっているのです。
徹底的に報われない物語。
されど、これも真実。


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