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クリーニングで、ハイ五万円。 [カナダの日々]

五万円ですよ!
何のクリーニングって、歯です。
それも特別な薬剤やマシンを使うような審美の施術ではなく、例の先が尖ったキュレットとやらで歯茎の隙間をガリガリ掻き回される、ごくごく普通の歯石除去です。
まあ、初診料代わりに歯の全体レントゲンを撮られたのもかなり効いているのですけれど。

移民前には「カナダは医療費が無料だ!」と無邪気に喜んでいた私ですが、こと眼科と歯科に関してはかつては州の健康保険でカバーされていたこともあるようなのですが、いつからか成人は対象外に。
一方、普段の私が定期的に通うクリニックはまさにこの二つのみ。
かつては配偶者Rも稼ぎの良い定職に付いており、州がカバーしない医療費もほぼ全額が会社によって支払われていたため、一体医療費の内訳がどのようになっているかなどは考える必要もなかったのでした。
しかし、今では自営業となった彼と、無職なこの私・・・。
・・・全額負担?
それでも歯科には行かねばなりません。差し迫った危機があるわけではないのですが、定期検査とクリーニングは必要ですよね。
特にアメリカ人は歯が命!なこの社会、ある程度のステイタスにある人々は白磁のスマイルに目を剥くほどの大金を注ぎ込むことも厭わない世界なのです。
普段は身だしなみに気を使わないオヤジも、小太りのエンジニアも、定期検査の時期が来て歯医者からの来院コールを受けると、皆いそいそと歯科に出かけて行くのです。

幼少の頃、私は学内で十人程しか居ない虫歯ゼロ生徒の肩書きを誇らしげに掲げていたものでしたが、とある年の校内一斉定期点検にて、「今すぐに治さないと手遅れになる虫歯がいくつもある」との栄光失墜の通告を受けてしまったのが運の尽きでした・・・。
昭和50年代当時、先生や医者などは天下の権威。親ともどもお医者を疑ってみるなどということは思いつきもせぬ純真な小市民でしたので、その宣告に哀しく涙を流すものの、早速その校医の居る治療院へ診察の予約を入れたのでした。
結果、このヤブ医者に目視では見えない数々の「虫歯」に悉く大穴を穿たれ、私の奥歯は殆ど銀で覆われてしまったのでした・・・。
治療の継続をやめたい旨を申し入れた際には「まだまだ虫歯がある」との話で、危うくヤブの利鞘稼ぎのために一生物の歯全てに穴掘りをさせてしまうところでした。
悪夢はそれだけでは終わらず、お粗末な治療は詰め物と歯の隙間を残し、そこから更に虫歯の経年進行を許してしまったのです・・・。

この恐ろしい経験により、私は歯医者選びには慎重に慎重を期しています。
多少お高くても、治療に失敗したからと言ってネズミのように新しいのを生やすわけにも行かないのですから、信用できる先生にしか私の歯は預けられん!
それにしても五マンエンとは・・・。
しかし、確かにここはとてもにこやかで良いクリニックです。
スタッフにも徹底したプロ意識が見られ、これも先生の人柄と職業に対する真摯な姿勢が表れているのでしょう。
日本での治療痕である銀歯が珍しいようで、一通りのチェックの後、スタッフが集まって私の歯および治療痕の品評会、さらに鼻腔が一般に比べ広いので鼻風邪の時は人より辛いという、我が身のことでありながらまったく想像もしたことがなかった事実を教えてもらいました。

特筆すべきだったのは、一時間半ぶっ通しで血まみれになりながら私の歯を掃除してくれた歯科衛生士さん。
普通はゆすがせてくれますよね、五分ごとくらいに。
完璧主義者なのです。歯茎の奥に隠れたほんの僅かなミクロン歯石だって、見逃せません。
自らの職業を愛しておられます。
最初は無愛想で少々恐めのオバサン・・・?と言った雰囲気だったのですが、歯石除去への限りないこだわりと情熱について問わず語りに話してくださいました。
前述のごとく、半年ごとに定期点検に来る常連の患者さんには、大した歯石の蓄積など期待できない。
しかし、ごく稀に外国からの新患が来るとなると、歯科衛生士の間には腕が鳴るこの獲物を攻略する幸運者の座を巡り、殺気立つ空気がひそやかに流れるのだとか。
本日の患者リストに私の名を見つけた彼女は、「この歯石は私のものよ!」とガッツポーズで気勢をあげたのだそうです。
そして人種のモザイクであるトロントにおいて、あらゆる人々の歯石をひねもすこそげ落とす彼女が、人種による歯肉及び歯石の蓄積具合の違いについての興味深い考察を披露してくれました。
例えは本土出身の中国人は普段からあまり歯を磨く習慣がないためか、ギネスブック並の歯石が取れる横綱級。
しかし四千年の習慣のための進化か、鍾乳洞のような歯石を結集させている人が居れば、一方で不思議なくらいに何も付いていないまっさらな歯を持つ人が居る。
白人種には白人種の、インド人にはインド人の、東洋人には東洋人の、それぞれの特徴があるのだとか。
黒人の歯は大きく強いのだが、逆に歯肉が柔らかくデリケートなため、歯茎のトラブルが多いとのだそうですよ。
どうだ、知らなかったでしょ?どうでもいいミニ知識がいっぱい付いちゃいましたね。
カナダで生まれ育ったアジア人、日本食しか食べないカナダ人、様々なパターンを観察するに、これは単純な食習慣による特性ではないとのこと。
歯茎における、人種による性質の相違についての観察考。大変面白い視点です。
如何に彼女の生活が歯石を中心に廻っているのかがわかりますね。

帰り際、「ステキな時間をありがとう。楽しかったわ。」と感謝されました。
どういたしまして。あなたが楽しんでくれたみたいで何よりです。
私も、人生で未だかつてなかったほど歯がキレイになった気がします。
血まみれだけどね・・・。

そうそう、先生には丁寧なリスク説明により、すぐにでも親知らずを抜くよう指導を受けましたが、この勢いでは一本につき十マンエンほど掛かりそうですので、いずれ仕事に就いてからに致します・・・。


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コメント 3

お久しぶりです。
加古さとしさんの絵がまた懐かしいですね。
私も今の歯医者さんに出会うまでは歯医者放浪していたのですが、やっと信頼できる先生に出会えて、今一生懸命通っています。
確かにお金はどんどん出ていきますが…クリーニングで5万はびっくり。
でも歯石ががっつり取れたのですね♪取るほうも快感なのですね~
by (2007-06-06 22:54) 

meg

おひさしぶり!
お元気ですか?
歯石は歯科衛生士の彼女にとってみればガッツリだったらしいのですが、殆ど目に見えるか見えないかのミクロの世界でした。
歯科って日本の三割負担の時も他にくらべて少し高めだと思ってましたが、凄まじい値段です・・・。
普通の治療じゃどんなに高度の治療をしたところで、一回のお会計が一万円を超えたことなかったので。
まともな治療は定期収入の目処か、会社の健康保険をゲットしてからじゃないとムリかな。
意外に格差社会を実感・・・。
by meg (2007-06-06 23:57) 

某ドカタ


Hしてお金もらえるって最高だな!!!!
ぶっちゃけテキトーにやっても月30万越えとか余裕だし(笑)

もう仕事辞めて、これ一本で食ってくわ!!!!(* ̄ー ̄)v
http://fkpkc3p.fukushima.coresy.net/fkpkc3p/
by 某ドカタ (2011-04-02 18:55) 

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