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中世紀行はカルカッソンヌから [仏蘭西]

切り立った崖の上に建つ廃墟の城砦、連なる山々の谷間に忽然と現れる中世の鷲巣村、凄まじい峡谷の側面に張り付いた僧院・・・。
想像するだけでワクワクして来ます。
3cm四方ほどのそんな写真をガイドブックに見つけ、情報は少ないながらもこのミディ・ピレネー、ラングドック地方を1週間を割いて訪れてみることにしました。
通常のフランス観光コースからは少し外れた、マニアックな地域と言えます。
トゥールーズに降り立ったのは、そこに目的地に一番近い飛行場があったから。
本来の拠点はここから80km先のカルカッソンヌです。

夕方6時頃にレンタカーで空港を後にした時には大雨暴風警報発令中、目指す方向の高速道路に乗るまでわかりにくいフランスの道をグルグルとさ迷い続けたため、結局その晩はカルカッソンヌには辿りつけず、途中の Castelnaudary という小さな街で一夜を明かすことになりました。
この地方の名物料理「Castlet(カスレ)」の発祥の地ということで、街一番のレストランと言った風情の一軒でゆっくり食事をすることに。
このカスレ、今回の旅行中でお釣りが来るほど食しましたが、正にこの料理が語源のキャセロールで白インゲン、鴨のコンフィ(脂漬け)、フォアグラ、ソーセージなどをスパイスを利かせてごった煮にし、オーブンで焼いたもの。
この地方ではとにもかくにも鴨料理なのですが、すべてが鴨の部位をできるだけ長期間保存の効く方法で加工した伝統家庭料理です。
その昔、百年戦争中にこの Castelnaudary がイギリス軍に包囲された際、住民は最後の保存食をまとめて煮込んだこのカスレを味方の戦士に食べさせ、ついに敵を撃退したのだそうです。

さて、翌日カルカッソンヌに着いた折には嬉しいほどの快晴。
オード川に架かる橋を渡り旧市街へ向かう途中、突然展望が開けヨーロッパ最大と言われる城塞の全貌が小高い丘の上に姿を現し、ぎょっとさせられます。
現在の城塞は一旦廃墟になっていたものを、19世紀に忠実に再現されたものであるということですが、その黒光りする灰色の巨大な城壁、圧倒的な存在感に思わず息を呑みました。
(写真は夕陽に照らされる城塞)

指輪物語的な中世ファンタジーにはまったく食指が動かずにいた私ですが・・・、この度各地で「本物」を目の当たりにしたところ、態度を180度改変することに致します。
これらは何もマンガやファンタジー小説専売特許の創造物ではなく、実際に存在する世界だったのですね。
余りに現実と掛け離れた怪物退治などは措いておいても、中世の戦や世界を忠実に表現したファンタジーならむしろむさぼり読みたいかも。
欧米の少年たちは皆、剣や大砲に憧れ騎士物語に夢中になるようで、中世の城の内部には、普段は観光客が溢れる場所には興味を示しそうもない年頃の男の子たちが、目を輝かせて武器や甲冑の写真を撮っているのが微笑ましいです。

このカルカッソンヌ、ジャン・レノのコメディ映画「おかしなおかしな訪問者(Les Visiteurs)」のロケ地にも使われたということで、後日その作品を観てみました。
12世紀から現代にタイムスリップしてしまった中世の領主ジャン・レノが、自分の子孫に当たる女性と出会ってドタバタ喜劇を繰り広げるというストーリー。
非常にバカバカしいお話なのですが、ラングドックの山間の絶景や本物のお城、手を抜かずお金もかけた中世の服装やセット、繰り広げられる美しい映像がどうしてなかなか見ごたえがあるのです。
ジャン・レノの真面目な顔と絶妙のヘンな間も何とも言えずおかしく、結構楽しめました。
城主の子孫は今や城を手放し、現代では家来であった男の子孫が所有者となってホテル経営をしているのも、またフランスの現実といった感じで笑えます。
実際、中世からの城や邸宅を現在まで保持している領主は少なく、国からの文化財指定により補助金が出る場合にはともかくも、そうでなくては昔のように農奴から徴税できるわけでもなく、莫大な維持費を捻出するために観光客に一般公開して入場料を取ったり、ホテルやレストランに改装して何とか生き永らえている城主も多いのだとか。
しかし、あのものすごい早口でまくしたてる会話・・・ほとんどフランス語に聞こえない・・・。
フランス人には問題なく理解できるのでしょうか?

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 ↑これは続編だそうです。


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